【T-SQUARE mora独占先行配信 記念インタビュー】その瞬間のリアルな演奏を体験してほしい

2021年4月4日、THE SQUARE Reunion -FANTASTIC HISTORY- @Blue Note Tokyo ~2nd stage~の模様が2021年7月29日より、moraにて独占先行配信された。AAC、ハイレゾ、DSDの全配信形態をmoraで楽しむことができる。

本作は7月28日に発売された『Crème de la Crème~Édition spéciale~特別篇@THE SQUARE~T-SQUARE “1978~2021″作品集』に収録されたBlu-rayがベースになっている。これはブルーノート東京の配信用に収録した素材を元に音声に再ミックスを施した特別版。さる4月26日に急逝した元メンバー、和泉宏隆のTHE SQUARE Reunionにおける最後のステージが収録されており、追悼の意を込めた作品でもある。

そこでT-SQUAREのメンバー3人に、収録時のこと、和泉宏隆の思い出などを伺ってみた。

インタビュー:近藤正義

 


独占先行期間:2021/7/29(木)~

The Last Live
2021.4.4 “THE SQUARE Reunion -FANTASTIC HISTORY-
@Blue Note Tokyo~2nd stage~”

THE SQUARE Reunion

The Last Live 2021.4.4 "THE SQUARE Reunion -FANTASTIC HISTORY- @Blue Note Tokyo~2nd stage~"

AAC FLAC DSD

 


――この作品はCDではなく、配信という形で世に出ることになりました。

安藤:オリジナル・アルバムと違って、ベスト・アルバムやライヴ・アルバムは我々の意とは離れたところで作られたりするので、出ることを聞いて初めて知るという感じですね。昔は知らない間にベスト盤がリリースされていた、ということはよくありました(笑)。それはさておき、ニュー・アルバムがレコードでもなく、CDでもなく、こんなふうに配信でリリースされるという在り方に、時代の流れを感じますね。

坂東:僕はアルバム・ジャケットにもこだわる方なので、今もパッケージ商品が好きなんです。でも、音楽を供給するシステムとしての便利さにも徐々に馴染んできたところです。移動中にも聴くことができますし、聴く環境を選ばないですからね。

伊東:DVDやBlu-rayは、その使える容量の多くを映像に持って行かれてるわけで、それだけ音質がおろそかになってしまうのは仕方がない。でも、我々ミュージシャンは1つの音を探すことにも凄く拘りを持っていて、たぶん映像の部分よりも手間暇かけているのではないかと思っている。だから音に特化して、しかもハイレゾという高音質で世に出ることは意義のあることだと思うよ。音楽に関してのデジタルはずっと試行錯誤の繰り返しだったけど、やっとスタート地点に立ったという感じかな。

T-SQUARE moraインタビュー

左から 坂東慧氏、伊東たけし氏(リモートでの参加)、安藤正容氏 

――演奏していた当日、印象的だったことなどがありましたら、お聞かせいただけませんか

安藤:「BIG CITY」という曲で、伊東さんがやたら僕に「お前も弾け!」っていう感じでちょっかい出してくるんだよ。よく伊東さんはキーボードの白井アキトと絡んでいたからそのつもりでいたら、この時は何故か僕のところへ来た。いきなりフラれてオタオタしたのを覚えています。どうしても弾けというのなら弾いてもいいよ、みたいな感じでソロを弾き始めまていますね(笑)

伊東:あの曲では演奏中に安藤のギターのカッティングがやたら聞こえていて、これはリフで主張してきたな、こいつは負けたなと思った(笑)。その時、ひらめいたんだよ。この曲に安藤のソロはなかったけど、ここで一つ弾いてもらおうってね。狙いどおり、素晴らしいソロを聴かせてくれた。

安藤:伊東さんはステージ上でのインスピレーションというか、鋭い感覚を持ってるよね。

坂東:T-SQUAREの音楽はきっちりしたアレンジで決められているというイメージがありますが、こういうライヴならではのハプニング性はよくあるんですよ。お客さんにとっても、楽しみの一つなのだと思います。

――それでは、あのお二人の絡みや安藤さんのギター・ソロは、本来はないものなのですね

安藤:ホント、急な展開だった。最初に伊東さんが軽く絡んできた部分では、ああいうふうに攻めてこられたら、とりあえず同じフレーズで返すのが常套句なんだろうね。でも僕はそういうのが苦手で違うフレーズで返していた。その後ギターの音色を切り替えてオーバードライブさせてからのソロも全くのアドリブです。

伊東:突然やるところに、ライヴならではの緊張感があるんだよ。同じ曲でもその日によって違うのがライヴだからね。

安藤:フィリップ・セスとブルーノートでやった時も、彼は演奏中に音量を下げるとかブレイクを入れるとか急に指示を出すでしょ。坂東君も含めてメンバーはみんなとっさに反応できてるんだけど、僕だけいつも取り残されてる(笑)

――T-SQUARE初期メンバーによるTHE SQUARE Reunionということで坂東さんはこのライヴ音源には参加されていませんが、ご自分が参加する時のセットとの違いを感じますか?

坂東:やはり現在のT-SQUAREとは全然違うと思います。同じ曲をやっても違うんですよ。リズム・セクションが入れ替わるのが大きな理由だと思います。

――リユニオンの須藤・則竹と、現在のT-SQUAREである坂東。安藤さんと伊東さんは両方のリズム・セクションと演奏しているわけですが、この2つにどのような違いを感じていますか?

安藤:全然違いますよ。良い悪いじゃなくてね。T-SQUAREは今現在いつも一緒にやっているメンバーで慣れているからとてもやりやすい。僕がそういう身体になっているんですよ。そこがTHE SQUAREのメンバーになると一変してシビアになる。ちょっと勝手が違って緊張するんです。やはり以前のメンバーとは今はたまにしかやらないし、昔と違ってお互いに変化していますからね。

伊東:THE SQUAREはトーナリティーが明快な曲が多いんだよ。だから変化を加える余地があまりない。得てしてそういうタイプのサウンドを盛り上げるのは難易度が高いんだ。音圧を上げていくだけで片付けたくないしね。その点、T-SQUAREは曲の世界を広げていくスペースのようなものを持っている。メロディーも問題のない程度ならフェイクしてやろうかな? とかね。我々ミュージシャンは、その瞬間に反応して自分の音色、音量、フレーズを考えて、それをサウンドさせるために気持ちのいい場所を探すからね。そういう違いだと思うよ。

T-SQUARE moraインタビュー

――この作品が偶然にも和泉さん最後の参加作品となってしまいましたが、あのステージでの和泉さんについて何か覚えていらっしゃいますか?

安藤:まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったので、あの時もステージ上に和泉くんがいるのは当たり前のことだった。だから、特別なことは何も覚えていないんだよ。

伊東:あの日、和泉を見て太り過ぎじゃないかなと思ったものだから、「身体だけは大切にね」なんて話をMCでもしたんだよ。でもステージでやってることはいつもと変わらなかった。ちょっとしたことで反発したり、逆に演奏中に目を合わせてニヤリとしたり、今も目に焼き付いているのは彼のそんなちょっとした仕草かな。いつもと変わらないリハーサルだったり、本番だったり、楽屋だったりね。最後に一緒に演奏できて、演奏家としての普段と変わらない姿を僕の心に残してくれたことは嬉しいと思っている。

――和泉さんの演奏の特徴とは如何なるものなのでしょう?

坂東:40周年のアルバムの時、僕の曲2曲でピアノを弾いてもらったのですが、ハーモニーがリッチになり、曲に魂が吹き込まれる瞬間を体験することが出来ました。ハーモニーのつけ方、リズムのとり方に独特の特徴があるんです。それがメロディーと融合して、強力な引力を発揮するという感じですね。僕は小さい時から和泉さんの曲を聴いて育ったので、嬉しかったです。

It’s a Wonderful Life!

T-SQUARE & THE SQUARE Reunion

It's a Wonderful Life!

AAC FLAC DSD

 

安藤:確かに、和泉くんが弾くとサウンドが全体的にリッチになるよね。理論的な理由は分からないけど‥。彼のリズムはタイトでもシャープでもなくて、ちょっとルーズな感じなのかな? 5連符とか6連符とかで割り切れないようなフレーズもよくあるよね。

伊東:リズムに関しては和泉独特のウネリがあって、あれはビックリするくらい尋常じゃないな。リズムがジャストなヤツはいくらでもいるんだけど、タイトであればあるほど暖かさはなくなる。だからと言って決して和泉のリズム感が悪いのではなくて、スリリングなタイム感なんだよな。音階のスケールアウトと同じで、リズムでタイムアウトしてギリギリのところで戻ってくるんだ。

――それでは最後に、このライヴ作品を一言でプロモーションしていただけますか?

安藤:ライヴだから、生々しい部分ががたくさん詰まっています。同じ曲でもスタジオ・テイクとは違う、その瞬間のリアルな演奏が聴きどころじゃないでしょうか。和泉くんの演奏に関しても彼らしさがよく表れているので、ドキュメントとして聴いていただければと思います。

坂東:ハイレゾならではのハイ・ファイ・サウンドで、ライヴならではの演奏中のミュージシャンの呼吸や楽器同士の会話が明確に感じとれるので、ぜひそれを体験してください。

伊東:オーディオ的には、ステージその場の環境がどのくらい再現できているのか、CDとは違う立体感が聴きどころだね。ブルーノートの会場の鳴りとかそういうことも含めて、バンド全体がサウンドする臨場感もね。また、和泉宏隆最後の演奏でもあり、そういう意味でも心に残る作品となったので、彼のことを思いながら聴いていただけたら嬉しいです。

 


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